浜松さん

「やさしくされる」ということが苦手だったぼくが、soarと出合って知った、やさしさの意味 / 五十嵐大(ライター) #soar応援

こちらの記事には、ウェブメディアsoarの3周年に向けて、soarメンバーやsoarライターをはじめ、soarを応援しているみなさんが思いを綴ったコラムを掲載してます。

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ずっと、「やさしくされる」ということが苦手だった。

ぼくの両親は聴覚障害者だ。母は生まれつき耳が聞こえず、父は病気を機に聴力を失った。だから、幼い頃のぼくにとって「音のない世界」は、ごく身近なものだった。

そんな両親のもとで育ったぼくに対し、周囲の大人たちはいつもやさしい言葉をかけてくれた。

「ご両親の耳が聞こえないなんて、大変でしょう」

「こんなに小さいのに苦労をしてるのね。偉いね」

「困ったことがあったら、いつでも頼ってくれていいからね」

でも、なにひとつ嬉しくなかった。両親が聴覚障害者であるということが、そのまま「不幸である」ということに結び付けられているような気がしたからだ。やさしい言葉をかけられるたび、やさしい手を差し伸べられるたびに、ぼくはその裏側に同情や憐憫が潜んでいるのではないかと疑うようになっていった。

そうしてぼくは、やさしくされることもやさしくすることも苦手なまま、いびつな大人へと成長した。

自分のなかに昇華しきれない歪んだ想いがくすぶっていることを知りながらも、ぼくはその対処法が見つけられずにいた。

そんなあるとき、友人に勧められてsoarに掲載されているこの記事を読んだ。

これは、聴覚障害・視覚障害のアスリート高田裕士・千明夫妻の軌跡を追ったもの。初めて読んだとき、思わず涙が出た。

そこで紡がれていた物語は、よくある「障害者を憐れむ」ようなものではなかった。インタビュアーはご夫婦と同じ目線に立ち、彼らの言葉に耳を傾けている。行間にはインタビュー中の楽しそうな雰囲気が滲んでおり、1ミリの同情や憐憫なんて感じられない。ただひたすらに、彼らの軌跡を丁寧にすくい取っていた。

こんなに素敵なメディアがあるのか。そう感じたぼくは、soarがライターを募集していることを知り、すぐにコンタクトをとってみた。後日、代表の工藤さんとお会いする機会をもらい、自分の想いをぶつけた。その結果、ぼくはsoarのライターに採用されることとなった。

ただし、正直、自分が書いていいものかどうかはギリギリまで迷っていた。他人にやさしくされたくない、やさしくできない、なんていびつな想いを持っている人間が、こんなに愛情に溢れたメディアで執筆をしていいものか。はたして、なにが書けるのだろうか。

それから、下記のような記事を担当させてもらった。

正直な話、これらの記事をまとめるのには相当苦労した。soarでは、インタビュイーの発言をただその通りにまとめるのではなく、ひとつの「物語」にすることが求められる。その場の空気感、相手の表情や仕草、お話をしてみて感じたこと……。それらをブレンドして仕上げなければならない。

ただし、大変さを感じる反面、それ以上に楽しいとも感じるようになった。そして、一つひとつの記事が完成するたびに、見つかったものがある。やさしさの意味だ。

やさしくするということは、相手と向き合うことではない。相手の隣に寄り添い、目線の高さを合わせ、同じ世界を見てみる、ということだ。そうすることで初めて、相手が見ている風景を知ることができ、本当に求めているものに気づくことができるのだ。

上述の記事に登場してくださった盲ろう者の森さん、聴覚障害者のえみるさん、トランスジェンダーの幸さんらが抱えている痛みや困難を、ぼくが“当事者として”共有することはできない。けれど、彼らの目線に立ち、見ている風景を知ることはできる。そして、その行為には同情や憐憫などは皆無だ。あるのは、ただ相手を理解したいという気持ちだけ。

そして、それこそがやさしさなのだと思う。

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やさしくされることが苦手だった、あの頃の自分にその答えを教えてあげるとすれば、ぼくは真っ先に「soarを読んでみな」と勧めるだろう。

soarとの出合いに、心から感謝したい。

soarでは、2018年12月22日に迎えるメディアオープン3周年に向けて、みなさんの応援の声を集め、より多くの人にsoarのことを知ってもらえる「#soar応援」キャンペーンを実施中!寄付での応援も受け付けています。詳細はこちらから。
文=五十嵐 大
写真=川島彩水


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