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回復とは"ありたい姿"へ近づいていくこと。Dr.ゆうすけさんと鈴木悠平が語る、回復の物語

soarが掲げるテーマのひとつに、「回復の物語」というキーワードがあります。

私は、今自分が手にしているものを失うのが怖くて、びくびくしているようなところがありました。何かを失ったら、すぐに取り戻したい。「回復」の意味は、辞書の通り、「元の状態に戻ること」だけだと考えていました。

でも、soarに出会い、記事を読むようになって、さらにライターとして記事を書く立場になり、私の中の「回復」の意味は変わりつつあります。

何かを失ったとしても、人は新たなものを取り入れて、別の形のものを生み出す力を持っている。これは、記事に登場したインタビュイーの方や、インタビューで実際にお会いした方々から教えてもらったことです。

「回復」とは、より良い状態になること。新しい自分と出会うことなのかもしれません。

今回、ご登場いただくのは、日々患者と向き合う内科医のDr.ゆうすけさん。フォロワー数16,000人を超えるTwitterアカウントや、noteでメンタルヘルスの情報を発信しているDr.ゆうすけさんは、soarを支えてくださっているサポーターの1人でもあります。

そんなDr.ゆうすけさんと「回復の物語」について語りあったのは、soarの理事でもあり、記事の執筆も行う鈴木悠平です。全く違う立場の2人が「回復」を巡ってじっくりと対話し、考えを深めていきました。

医学的な“回復”だけではない。患者に寄り添うということ

鈴木悠平(以下鈴木):Dr.ゆうすけさんは、メンタルヘルスの情報を発信されていますが、もともとその分野への興味や知識があったのですか?

Dr.ゆうすけ(以下ゆうすけ):いえ、実は医師になったばかりの頃は“医学的な”回復しか考えていない未熟な医師でした。

鈴木:“医学的な”回復というのは、目の前の患者が抱えている病気を治すということですよね?

ゆうすけ:そうですね。なので、たとえば自傷行為をした女の子が救急に運ばれてきたとして、その子にはどんな生活があって、なぜ自分の身体を切ってしまうのか、当時はその理由を考えることはありませんでした。医療と生活の溝は深いものなのだな、と今改めて感じています。医療従事者が患者の背景や苦しみを知ろうとしなければ、その溝は埋まることはないんです。

鈴木:今は「メンタルヘルスがライフワークの内科医」と自称されていますが、メンタルヘルスに注目するきっかけがあったのでしょうか?

ゆうすけ:10年ほど前に親しい友人が自死で亡くなったんです。そこからメンタルヘルスの問題を自分ごととして考えるようになりました。

病気を治す技術を持っていることと、患者を目の前にしたときにその人が抱える苦しみを理解することは全く別のもの。病気について膨大な知識を持っていたとしても、苦しみを理解したことにはならないんのだと気づいたんです。

鈴木:寄り添う、と言葉にするのは簡単ですが、実際に行動するのは難しいですよね。でも、Dr.ゆうすけさんのそんな考え方に癒されている人がたくさんいるからこそ、Twitterにも大勢のフォロワーがいるんですね。

ゆうすけ:実はTwitterは、自分の身近にいる人のことを頭のなかでイメージして、その1人に向けて書き綴っているんです。なので、多くの方から反響があることには驚きました。

鈴木:きっとDr.ゆうすけさんのなかでイメージした“1人”に似た心持ちの人がたくさんいて、結果多くの人が回復するためのエッセンスになっているのだと思います。

病気や障害がその人にとって問題にならないこともある

ゆうすけ:Twitterなどで、自分の考えや思いを発信するうちに、気付いたら知っていて、いつのまにか好きになっていたのがsoarでした。

鈴木:自然な流れでsoarを好きになってもらえて嬉しいです。soarに好感を持つ理由を教えてもらえますか?

ゆうすけ:これは友人のサチコさんの表現なんですけど、人はそれぞれ心のなかに辞書を持っていて、その辞書に似たような言葉を納めている人たちがsoarに集まっている気がするんです。

鈴木:心の中の辞書!すごく詩的な表現ですね。

ゆうすけ:ですよね。「価値観」とも言い換えられると思います。スタッフの方も、記事に登場する方も、もちろんsoarの読者の方とも多分敵対することはなくて。共通言語が多いから、友達が見つかりやすかったり、価値観が合いやすかったり、僕にとってsoarはそういう安心できるところかな。

記事に登場する方は、なんらかの障害や病気がその人の要素のひとつであることが多いですよね。でもそれだけに焦点を当てるのではなく、その人の人生の物語が描かれているのがすごく良いと思っています。

鈴木:それにはとても気をつけています。取材の時間をたっぷりと取って、その人の生活の場に赴いたりして、対話しながらその人の人生を少しずつ紐解いていくことに気を配っているんです。そこにこそ、今日のテーマでもある回復の糸口があると思うので。

ゆうすけ:soarの記事を読むと、生活が成り立っているのなら障害や病気がその人にとって、問題にならないことがあるんだと気付かされることがあります。

鈴木:それを聞いて抜毛症がある土屋さんの記事を思い出しました。髪の毛を抜いてしまう症状に「抜毛症」と名前がついているけれど、本人がそれを無理やり治そうとするのではなく、ウィッグを付け替えたり、何もつけないときもあったり、自分の装いを表現しているんですよね。

ゆうすけ:そうそう。医師として患者と向き合う時に、病気を治した方がいいという“決めつけ”があるのだと考えさせられました。その人の生活のことを知りもしないのに…。今は、病気が治ることがその人にとってベストということだけではないんだなと思っています。

回復とは、“こうありたい”という姿を目指すこと

鈴木:病気や障害がある方が、それらをすぐに受け入れて強く生きられるわけではないですよね。

ゆうすけ:本当につらいときやしんどいとき、ネガティブなことや最悪なことを考えて悲観的になることで、それを盾のようにして、もうこれ以上傷つかないようとに自分を守るという状況もあると思います。

そのことに、医者を始めとする医療関係の人も気がつかなければいけない。僕自身もかつては目の前の患者さんのつらさやそれぞれが持つ事情を知らなかったし、知ろうとしませんでした。でも、僕みたいな恵まれた環境にいる人間がそういうことに無知であるのって、ときにものすごい残酷さにつながることを痛感したんですね。だからこそ、医療関係や福祉関係の人にもsoarの記事を読んで、人それぞれが持っている物語について思いを馳せてほしいと思います。

鈴木:その悲観的な状態から人はどうやって、回復していくのでしょう?

ゆうすけ:悲観的な状態であっても、人は物語を紡いでいるのだと思います。“すがるべき物語”と表現すればいいでしょうか。その物語を生きることで自分を保っているんです。でも、同時に“本来はこうありたい”という物語も持っていて、そこに移行していくことを回復と呼ぶのかなと思っています。

soarは居心地のいい街のよう。それがいつまでも続くように

鈴木:まさに、その移行期間をsoarでは大切にしています。僕はsoarで理事をしていますが、ライターとして記事を書くこともあるんです。取材対象の方と話をして、一緒に記事を作るなかで僕自身も楽になったり、肩の荷を降ろせることがありました。

ゆうすけ:きっとインタビューされる側も、対話を通して新しい何かを見つけたり、また一段生きるのが楽になったりということがあるんでしょうね。

鈴木:自分一人だと視野が狭くなってしまうときに、医療従事者やカウンセラーとか、そして僕たちライターや編集者がそばで同じ時間を共有することで、物語を編みやすくなったりとか、自分のことを新しく発見したりっていうことがあるんだろうなって。soarの取材でも、インタビュイーとインタビュアーで一緒に記事を作る中でお互いが回復していくことがあると思います。

そして回復には終わりがないんですよね。過去に起きたことは変わらないけれど、時間の流れや経験、まわりからの影響で解釈は変わっていって、人が持つ物語は常にアップデートされている…。人は回復し続けるのだと思っています。

ゆうすけ:soarの記事には、これからその人が変化していくという余地が残されているように感じます。そこが誠実で、人間的。過剰にショッキングだったり感動的な記事ではなく、その人の物語を自然に描かれているので読んでいて心地いいし、リアルな希望がもてる人が多いと思うんですよね。

鈴木:誠実に向き合ってできた記事は、読者にきちんとメッセージを届けられる強度があって、射程距離も長く、多くの読者に届くんです。そして、記事を読んでくださった誰かの“回復の物語”にもつながると信じています。

ゆうすけ:そんな思いがsoarの心地よさを作っているんですね。soarには、他のどこにもない心地よさがあると思っています。例えるなら居心地のいい街みたいな。

鈴木:居心地のいい街!!初めてそんなふうに言われました。

ゆうすけ:そうそう。清流が残っていて、空気も澄んでいる数少ない場所のような感じ。この居心地のいい街にずっと住人として住み続けられるように、住民税を払うような気持ちでこれからも寄付でサポートしていきたいです。

たくさんの人たちと手を取り合って、soarをより良い街に

人はそれぞれの物語を生きています。出会った人や、経験、流れる時間をそこに編み込みながら。そうして、その人にとって、より良い物語をつくり続けていくことが「回復」のひとつのありかたなのかもしれません。

soarでは、これからもその物語を丁寧に紡いでいきます。Dr.ゆうすけさんが表現してくれた「soarは心地いい街」という言葉を胸に、さらに多くの人たちが、soarという街で居心地よく過ごせるように。

これから出会うたくさんの人たちとも手を取り合って、soarをより良い街にしていけたら嬉しいです。

関連情報
Dr.ゆうすけ Twitter note
鈴木悠平 Twitter note
written by 秋定美帆/Miho Akisada

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コメント1件

身体的・精神的回復よりも日本では社会的回復の方が難しいと体感しています!出身大学が岡山理科大学の所為で再就職試験に落ちた?https://note.mu/michizane/n/n94f0b2e60960
ので無く履歴書に正直に脳梗塞を患ったと病歴も載せる必要が有るので落とされた気がする?!?
https://note.mu/michizane/n/n0d6a87795b77
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